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< 哀しいお姫様 >
いつもの窓から幸せそうな下界を覗いていた『哀しいお姫様』は、ある日、もう一度『側近』に聞きました。
――――"愛"とはどんなものなのですか?
『側近』は微笑んでこう答えました。
『――――私はあなたをずっとお慕い申し上げています。あなたは私の"愛"を感じませんか?』
『お姫様』は驚きました。そして、大喜びました。
やっと自分も幸せそうな民のように素敵な気持ちで日々を過ごせるのだと。
――――しかし、時が過ぎれば過ぎるほど、『お姫様』の表情は曇っていきました。
ずっと傍で見ていた『側近』は哀しそうに『お姫様』に聞きました。
『―――お姫様、どうかしたのですか?』
すると『お姫様』は無言で首を振るばかりで、何も答えてはくれません。
どんどん塞ぎこみ、とうとう窓の外を見るのを止めてしまった『お姫様』に『側近』はもはや自分の手に負えないことを悟って公明な『魔法使い』を呼びました。
『魔法使い』は『お姫様』に問いました。
「――――どうしたのです、お姫様」
するとどうでしょう。『お姫様』はゆっくりとそしてひどく哀しそうな笑顔で言うのです。
――――私は"愛"を知りません。だから、"愛"を信じることができないのです。
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