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< 怒り >




「――――――てめぇら、何してやがる」


怒気をはらんだ冷たい声が、部屋の空気を凍らせる。しかし、普段なら皆、青ざめて凍りつくその声も生憎、効果はなかった。

男とタメをはる悪友や要にとって、頭が痛いものの、裸足で逃げ出すほどのことではない。要はデスクにあるインターフォンのボタンを押して、マイクで神田の名を呼んだ。



「――――どうやら腹を空かせた野良犬が、もう一匹迷い込んだらしいな。・・・夕食の準備を」


「・・・かしこまりました」という返答とともにインターフォンが切れると、要は怒り狂った猛獣を無視して、4人の客人に「食べていくのだろう?」と冷たい視線で問いかけた。休戦の視線を受けて、4人の男も肩の力を抜いた。





「―――――――俺をのけもんにして何企んでやがった」

遅い夕食も終わり、どうやら野良犬たちは要のマンションをお気に召したらしい。皆、思い思いの場所で寛いでいた。恭平と竜也は、最下階でビリヤードに興じていたし、祐一はマンション中の絵を見て回っている。庄治に至っては、要のアンティーク・カーの群れに大喜びで、駐車場に降りていった。


―――残るのは、ただ1人。


その男は要を書斎に押し込んで、目下怒りの権化と化している。



要ははっと鼻で笑って、最高級のデスクチェアに腰を下ろした。そして、デスクに堂々と腰掛ける男を一瞥する。


「・・・除け者にされて、拗ねているというわけか・・・」



「――――言ったはずだ。あんたは俺のもんだ」

ぐいっと力ずくで胸倉を掴まれも、彼は顔色1つ変えない。逆に男のギラギラした視線を真っ向から受け止めて、彼は冷たく命令した。



「――――――離せ」


「離せば、あんたは何もかもしゃべるってのかっ、はっ、・・・・・・ふざけんなっ――――」


ぐっと力が篭り、要の喉は圧迫された。苦しさの中、しかし、それを見せてはやらず、彼はもう一度低く呟いた。



「――――――私は、離せと言ったんだ」

その声には有無を言わせず、断固決心を変えないという強さが秘められていた。しばし、互いに視線を交差させた後、男は低く、罵り声を上げて、手を離した。


―――ドンっと叩かれた机が悲鳴を上げた。



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あきゅろす。
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