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曇天が見下ろすなか、5人の人影が見えた。
彼らは小高い丘の上で一本の大きな木と対峙するように立っている。
それぞれが己の刀をしっかりと握り決意を固め、それを表しているかのように拳に力が入る。
「先生、ありがとな」
まだ幼い銀髪に紅い瞳の男が言葉を発する。
『辰馬に私たちを託してくれて』
高く髪を結った女が真っ赤な彼岸花の花を目の前にある墓前に備える。
「辰馬のおかげで俺たちはまた朝日を拝むことが出来た」
女のような長髪の男が花の隣に教本を置く。
それはこの墓で眠る己の先生の物。
「バカだけどな」
短髪の男は鋭い目付きをしながらも溶けるようにフッと笑う。
「バカは余計じゃ。
先生、こいつらはわしに任せるぜよ。
ちゃんと面倒見ちゃる」
特有のモジャモジャした茶混じりの黒髪が高らかに笑いながら言う。
「そんでさ、
松陽先生━━━」
「俺らは決めた」
「刀をとります。だから、」
『怒らないで天国で見ていて』
その声に返事をするかのように一陣の風が吹き抜けていった。
そこで、彼らは刀を鞘から抜き、天へ掲げるように4人が合わせ突き上げる。
刀同士がぶつかり、音を立て、光を反射させ、その神々しさが彼らの心を奮い立たせる。
「今、ここに誓おう……
我等は剣を取ることを。
だがそれは決して殺す為ではない。
貴方の教えを貫く為に。
大切な仲間を救う為に。
殺す剣ではなく護る剣としてこれを振るうことを」
凛とした声が風にのり、天へと流れていく。
それはまるで風が彼らの思いを松陽先生に届けてあげる、とでも言っているかのように心の奥底を通り抜けていった。
そして辰馬が一歩前へ踏み出し白く綺麗な墓石に手を当てる。
「頼もしいものじゃ、松陽、安心して眠るといいきに……」
丘の上から下を眺めれば曇天とはいえ変わらぬ美しい町並みが見える。
5人の影が丘から消えた。
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