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丘の上にある一本の桜の大木。それを彩るかのように薄い桃色の花が咲き、夜空にぽっかりと浮かんでいる満月の光を浴びて輝いている。
その薄い桃色の花は彼らが舞う血生臭い戦場には決して咲くことのない綺麗なモノ、そして唯一彼らの心に安らぎを与えられる場所。
四季に応じた美しさを兼ね備えるこの地は、彼ら以外に足を踏み入れる事はない。
「なぁ、ヅラ……」
「ヅラじゃない桂だ」
そんな桜を目指して、十代半ばの者達が丘を歩いている。
前方に坂田銀魂と桂小太郎。
後方には高杉晋助と月神威舞鬼。
後方の2人はいつものようにふざけあっている。
「"信頼"ってなに……」
「そんなことを俺に聞くな。
辰馬の事、気にしてるのか」
「いや、ただ何となく…思ってさ」
「何をだ?」
木に身体を預け、じゃれあう二人を視界に入れながら正面に見据える。
「先生も辰馬も…何でそんなに信頼にこだわるのかな、って思って」
「さぁな、そんなの俺にもわからん。
だが、信頼が何をもたらすかくらいならわかる」
正面にいる2人を見れば、身長を競い合っているのかお互いが背伸びをしている。
そんな微笑ましい光景は信頼によってもたらされているのだろう。
『晋助、私より身長何p高かったっけ?』
耳を傾ければ、晋助を茶化す威舞鬼の楽しそうな声。
「テメェ…斬るぞ」
『そう怒らないの。
いいじゃない、私よりかは高いんだから。
分かるでしょ?私の気持ち!
隊士たち見上げる嵌めになるからめっちゃ首痛いんだよ!?晋助も痛いでしょ!』
威舞鬼のそんな言葉に晋助はてめぇ!!、と言いながら、威舞鬼の首を掴んだ。
『いたたたっ、痛いってば!!』
刀を手にもち、威舞鬼を脅しはじめる晋助。
傍からみればその光景は至極危険だ。一人の女の子が今にも青年に斬られそうな光景。
だが、信頼しあっているからこそ2人は危険だと感じない。
「知らねぇよ」
『嘘つき。私知ってるんだから!
いつも部屋で首押さえてコキコキやってるの!
これを機にヅラや銀時に言ってあげる!
そんでもってからかわれちゃえ!』
笑いあう2人、それは一緒に戦う攘夷志士達の前では絶対に見せないものだった。
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