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‐020‐

『若いなぁ…』
『元の年齢考えてもお前まだ二十前だろ。』

 到底追いつく筈もない列車を追いかける半泣き顔な赤毛の女の子を見て、結悟がぽつり。その横顔に思わずツッコんでしまった瑞月だった。



魔法学校隠密乱入記 ‐020‐



 赤毛の女の子とその母親が見えなくなって、家々が飛ぶように流れて、ハリーの居るコンパートメントから音が聞こえて、しばらくしてまた音がしたと思ったら。結悟のコンパートメントのドアが数回ノックされた。

『…オイ、双子だぜ?』

 ぼーっと景色が流れるのを見ていた結悟は、瑞月のその一言に弾かれたようにドアを見た。

『…ぉおう…やっぱバレてたか…。』

 ガラスの向こうに、にこにこと同じ顔でこちらに手を振ってくる双子の姿を認め、諦めたようにため息を吐くと手をさっと払い、ドアを開ける。

「やあユイゴ。夏休みは楽しかったかい?」

「それにしても相変わらずすげえな。」

「そいつはどうも。ご存じの通り楽しい夏休みだったよ。」

 入るなら入れと双子を手招いて結悟が言う。

「そりゃあよかった。」

「ところでユイゴ。」

「「彼は誰だい?」」

 結悟達の向かいに座り、揃って瑞月を手で示す双子。

「あー…自称アタシの式神?」

 隣の瑞月をちらりと見つつ、結悟は答える。

「式神?」

「自称?」

 フレッド、ジョージの順で言う。きょとん顔は同じなのに、言う事が違うのだから妙に笑える。

「アタシの杖に封印されてた竜でさ。杖の忠誠心と一緒にコイツの忠誠心も得たって感じ?」

「ま、んなとこだろうな。」

 またちらと瑞月を見やれば、予想外にも瑞月が大仰に頷いた。

「…英語、喋れんの。」

「何百年も聞いてりゃ覚える。」

 その後しばし四人で喋っていたが、用事があるんじゃないのかと言う結悟の一言で双子は去って行った。

 シートを移動しふと窓の外を見れば、そこにはもうロンドンの町並みは無く。牛やら羊やらのいる牧場を通り過ぎ、野原を突っ切って走っていた。
 しばらく経って、十二時半を過ぎたころに車内販売のおばさんがドアを開けた。
 昼に甘いもの…と思ったが、空腹には勝てずかぼちゃパイと甘草アメ、蛙チョコレートをいくつか買った。百味ビーンズに心ひかれたが瑞月と二人で食べる事を思い、断念した。

『っはー…かなり甘そうじゃねぇの。』

 もっきゅもっきゅと結悟がかぼちゃパイを頬張っているのを見て、ニヤニヤとする瑞月。そんな瑞月に結悟は口の中のパイを飲みこむと、

『…瑞月。』

『あ?』

『食べたいんならそう言え。』

 ぎゅも、と瑞月の口にパイを押し込んだ。

『おまっ…』

『口ん中に物が入ってるときは喋らない。』

 ぴしゃりとそう言って、席を立つ。

――あ、立てた。

 立てたという事はつまりは。



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