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行って戻って、ホームの壁に寄り掛かってしばらくぼーっと音楽を聴いていたが、やがて1人、また1人と“93/4”と書かれた鉄のアーチからホームに人が入って来た。
それぞれがそれぞれに大荷物をカートに押し込み子どもは汽車へ。大人はホームでたまってお喋りに興じ、また戻ってきた子どもと会話し…。
気がつけばホームは音とモノとでごった返していた。
――…戻ろ。
これ以上ここに居たら、人に呑まれてあらぬ方向へ押し流されそうだ。そう結悟は思って壁から背を離す。あちらへこちらへ動く人をすり抜け、固まって話している集団を避けながら列車に乗り込み、コンパートメントに戻る。
『お帰りー。』
『ただいま瑞月。とりあえずお前何食ってんだ。』
『車内販売あるからいいだろ?』
もっさもっさと、用意したランチボックスを抱えてサラダを悪びれもせず食べている瑞月に結悟は、
『車内販売っつったってお菓子だし。どうせ食べるならサンドイッチ食べてよ…。』
貴重な生野菜…と項垂れつつ向かいのシートに座る。
『てか瑞月、モノ食べれるなら言ってくれたらよかったじゃん。いろいろ作ったのに。』
『食えるったって…ただの娯楽みたいなもんだからな。存在の上では必要ねぇし、オレが負担になるわけにゃいかねぇだろ。』
サラダを食べ終わってサンドイッチにまで手を伸ばしながら瑞月が答える。
『…やっぱりセリフと態度が合ってないんだよな。もういいや。ちゃんと残さず食べろよ。』
『了解了解。やっぱ結悟、お前料理うめぇな。』
『そりゃ…どうも。』
前々から興味はあったと、さらっと結悟を褒める瑞月。照れたように頭をかきつつ、結悟はそれに答える。上機嫌でサンドイッチを頬張る瑞月に何とはなく気恥ずかしくなってきた頃、ガタンゴトンと重たい物を落としたような音が近くに聞こえた。
――何だ?
ちらと外を窺えば、そこにはトランクを抱えた黒髪の少年、ハリー・ポッターその人が。
――…………………ぉおう…やらかした…
まさかこんな後ろの方にまでやってくるとは。そのすぐ後に現れたジョージと目が合った気がして、細かい描写までは覚えていない自分の脳に舌打ちしたい気分になった。
『…どうした?』
『いや、予想外っつーか…不慮の事態?ちょと寄って。』
瑞月を窓側に寄らせて、自分は通路際に座り身を縮こませる。今どちらかに、どちらかと言うとハリーに見つかると後々厄介なのだ。
ジョージのフレッドを呼ぶ声に思いっきりため息を吐く結悟であった。
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