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特別企画小説集
14



最初にナイフを手に取ったのはチャイ。
彼女はにっこり笑ってヴェールの手を引くと、「一緒に…」とケーキの前へ進み出た。



渋りながらも次の一本を取ったのはエイシア。
さらに渋るグリムの手をぐいっと引っ張ると「面白いことが起きないといいね♪」と不敵に笑う。



「──いざっ!」
出陣するかのように雄々しく取ったのは月夜。
彼女はセレスの手を握ると、"とことん楽しんじゃおう"。…そっと、囁いた。



右肩をトントンと叩きながら呆れ半分に徐にサリーへと手を差し出したのはユイン。
「茶番はさっさと終わらせてしまいましょう。あなたがグラスに注がれたワインを呑み始める前に☆」
…さらりと吐き出された言葉と向けられた手の平に、サリーはありったけの力で握手を返す。
「望むところだね!」

「……これもちはるさんが言ってた"ナワ"なのかな? …あ。間違えた、ナワじゃなくてワニ……あれれ?」
「──…わ・な!」
眉間に皺を寄せながらも、ナイフを手に取りかけたカパエルに手を重ねたのがルーチェ。



辺りをキョロキョロと見回し、息切れしているルーファスに声をかけたのはシェーナ。
「……支えますから、ご一緒しませんか?」
明らかに心配から近寄ったシェーナの内心を知ってか知らずか、ルーファスは急に元気ハツラツになって。
「──結構。一人でも歩けますぞ。それよりお嬢さん、今宵の予定は──…」
「………天誅!」
背後から迫っていた刺客…ではなく、ハラハラして見守っていたアホズロの峰打ちを受け、気持ちよさそうに鼻血をたらしながら床に寝転んだ。
ルーファスに代わってシェーナに手を重ねたアズロは、心拍数の収まらない体のまま、ケーキへと精神を集中させる。



「俺と組みたい人ー!」
元気に明るく相手を募集したフィロイの手は、先程から全く登場していなかったリュトンによってがっちりと握られた。
「の…逃してたまるか…活躍の場…ッ!!」
「………哀れな…」
フィロイはそれはそれは哀愁のこもった眼差しでリュトンを見つめながら、呆れ半分でナイフの柄を握った。



「…ごめんなさい」
「怒ってないよ?」
「嘘です」
「うん」
蒼の髪の青年と、金の髪の少年はただただ穏やかに微笑み合い。
「ピアニーさんたちとの待ち合わせには間に合うようにお返ししますから」
「──じゃあ、怒らない」
二人は同時に、左右からナイフを握った。






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あきゅろす。
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