特別企画小説集 13 * * * 「──…。 ……すみませんね」 バックに猛吹雪が見えるような睨み合い(注:微笑み合い)の後に発されたのは、発言の主に似合わない切なさを帯びた言の葉。 蒼の瞳はほんの一瞬だけ哀しげな色に揺れて……後ろ手に持たれた機密書類はいつの間にやら何処かへ消えていて。 それから──… 「ふふふ。 そーれそれそれ、きらきらぱーてぃ〜♪」 話の最初に誰かが歌ったものと同じ文句が朗らかに歌われた。 * * * どこか物寂しかったアーチ状の天井には、カラフルな折り紙の輪飾り。 カヤノスが幻影を作った豪華なテーブルセットは実体と化し、温かなスープと前菜はもちろん… さらに、色彩豊かな料理たちが追加される。 ふわりと舞う雪のように長テーブルに現れた蝋燭。 山形の三本立ての金色の燭台には、橙の灯がぽうっと点り──… 「楽しんでいって下さいね。…これは、私から皆さんへの…日々の御礼と応援です」 テーブルの中央に、細工の細やかなクリスマスケーキが載った大皿が、何もなかったはずの天井からゆっくりと下降してくる。 同時に現れた──…ケーキの周りに置かれたナイフは八本。 赤と緑のリボンが蝶々結びに括り付けられた木製の柄には、Thanks!という文字が彫られていた。 「──そのケーキに、皆さんで各方向から入刀してみて下さい」 エスタシオンは紳士らしい仕草で皆をケーキの周りへと誘導すると、二人ずつ十六名で八方向から入刀するよう薦めた。 「皆さんのタイミングが合えば、もう一つのプレゼントが降ってきますから」 微笑みを浮かべるエスタシオンの表情に、もう悪戯っぽさは見受けられず。 どこかきりりとしたその表情に、一同はめいめいに別の事を呟きながらも、ナイフに手を伸ばす。 [*前へ][次へ#] [戻る] |