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短編3
せかいはあらそいにみちている


 世界は争いに満ちている。
 この世界は平穏で、安穏として、生温い。恐ろしいほどに、何もない。
 誰かは言う。この世界以上につまらない世界はないだろう、と。
 この世界は、争いに満ちている。退屈という敵は、強大で、とても恐ろしい。



 何百年も昔に造られた『ろぼっと』が、どこか遠くで働いて、僕らの生活を支えている。壊れた『ろぼっと』は別の『ろぼっと』が修復して、また働き出すのだという。
 この世界で働いているのは、何百年も昔に造られた『ろぼっと』だけ。人間は誰ひとりとして働いていないし、働こうともしない。人間が働くという概念も、人間が働くための仕事もない。
 全ては『ろぼっと』の仕事で、『ろぼっと』が働いて、『ろぼっと』を直して、『ろぼっと』を動かす。『ろぼっと』は僕らの食べる食べ物を作って、僕らが住む家を造って、僕らが死んだら埋葬する。『ろぼっと』がいなくなったら、僕らはみんな抗うことも出来ずに消えてゆくのだろう。
 知らないところで働いている『ろぼっと』。感情のない機械、働くためだけに造り出されたものたち。
 彼らの世界に、争いはあるのだろうか。

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あきゅろす。
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