短編3
闇の道
暗い道を歩く。
ざわざわと、知らない子どもたちの声が響き、遠くからは犬の吠える音が聞こえた。
空を見上げると、数は少ないけれど星がまたたき、月が照らす。
枝葉をのばす木の影と、道を照らす街灯。街灯に照らされた花。
そして――街灯と街灯のちょうどまんなか。一番暗い、闇が澱む場所。
私は、気付かなかった。
いつもなら、気付いたかもしれない。気付かなかったかもしれない。わからないけれど、今日の私は油断をしたのだ。油断が、形を持って現れた。
街灯と街灯の間の、一際暗い場所。そこにあいた、闇の穴。
私は、落ちたのだ。
落ちた――暗い穴の中へ。闇の中へ。
気づいても、もう遅い。落ちてしまったのだから、時間を巻き戻すことはできないのだから。
だから、はあ、と私は溜息をひとつ吐いた。ただそれだけ。
そして、思った。
嗚呼、泣き声が聞こえる。
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