プリンセス・ジャック
11
シャムリーは素早く次の攻撃に転ずる。
ジュリアの左腕をめがけ、剣は突き進む。
今にも剣が腕を貫くという、間一髪の瞬間、なんとかジュリアはそれを回避した。
――服の一部が裂け、夜風がジュリアの肌にじかに当たった。
「ジュリアお兄様っ!」
ミルシーは思わず、愛する兄の名前を呼んだ。
見ている彼女にも、その緊迫感は痛いほど伝わってきた。
助太刀せねば、そう思ったその時。
花壇を挟んだ茂みから、影が飛び出した。
影は草花を踏み分け、花弁を散らす勢いで、ミルシーの元へ真っ直ぐ進む。
その影が手にしていた短刀が、ミルシーを襲った。
「……!」
とっさに槍の柄で短剣を受け止める。木製の柄は僅かだが傷がついた。
不意打ちに失敗したことを悟った影は、舌打ちして下がる。
短剣を手にして、そこにいたのは白と黒の眼帯女――フィーネだった。
「敵が……もう一人?」
驚くミルシーの表情に、フィーネは不敵に笑った。
彼女が撒き散らした花びら達はまだ宙を舞い、幻想的な風景を作りだしていた。
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