プリンセス・ジャック
8
「申し訳ございません王女様。あまりにも可笑しいので……くすくす。
そしてシャムリー様だけでなく、私の失態もお許し下さい。まさかあの毒が気づかれるとは思いませんでした。
本当に、犬みたいな女ですね……」
フィーネは眉をひそめながらも、口元の笑みは絶えない。
「……もういいわ。あなたも、シャムリーも」
「ありがとうございます。
ところで――」
フィーネは窓の外を見た。
「ネズミが忍びこんだみたいです。二匹ほど」
「……ネズミ?」
エヴァリーヌは立ち上がり、窓の外を見た。
――そしてエヴァリーヌは口元を緩める。
「聞いてはいたけど――本当にそうだったのね。
シャムリー。ネズミ退治は貴方に頼むわ。今度しくじったら……命をもって償いなさい」
「かしこまりました」
頭をさげ、部屋を出ていくシャムリー。エヴァリーヌは窓の向こうを見続け、その背中を見送ることはない。
だが扉が開き、そして再び閉まる音がしたとき、僅かに扉のほうに視線を投げた。
「くすっ」
またもや笑い声をあげたフィーネに王女は表情を歪める。
「何かしら、フィーネ」
「いえいえ。相手が二人みたいなので、私も行こうかと思いまして」
「ならさっさと行きなさい」
追い払うようにエヴァリーヌはいった。
「かしこまりました」
そしてフィーネも退室する。
室内に残ったのはエヴァリーヌと数名の侍女だけ。
エヴァリーヌは再び窓の外を見下ろした。
「恨みはないけれど……倒させてもらうわ。ジュリア王女。
――いえ、ジュリア『王子』」
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