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プリンセス・ジャック


「いいですよ。分かってます。
 俺がエヴァリーヌ様から離れられなかったのは、ただ怖かったからです。
 俺がエヴァリーヌ様を離れたら、代わりの誰かが貴女を護るでしょう。それが堪らなく嫌で、怖かった。
 実のところ、エヴァリーヌ様のお気持ちが分からなくなったことも、幼い日の誓いや約束を忘れそうになったこともあります。
 でも、想像できなかった。したくなかったんです。
 自分以外の誰かがエヴァリーヌ様を護るのを。エヴァリーヌ様を護るのは自分でありたかった……。
 そんな理由です。……軽蔑しましたか?」
「いいえ。まさか。
 ……ありがとう」
 そう顔を少し綻ばせる。小さな声だったが、確かにシャムリーの耳に届いた。

「そう言えば、俺もまだきちんと言ってませんでした」
 改まった口調でシャムリーは言った。
「愛してます」
「ぅ……」
 不意打ちだった。卑怯だ、と思えるほど。
 頬がこの上なく熱い。
「……ずるいわ。貴方はここ最近で、ずいぶん意地が悪くなった」
「エヴァリーヌ様は今も昔も変わらず、……愛らしいです」
 控えめな口調で、彼の頬は少し赤かった。
「か、からかってるの!?」
「まさか! そんな……」
「だって……」
 幸せな時間。でも身分が違いすきる二人が結ばれることはない。
 幼いエヴァリーヌはそれが悲しいことだと思っていた。
 だが、違う。
 例えば結ばれなくとも、『愛』は確かにここにあるのだから。
 それは幸せなこと。

「シャム」
「なんですか? エヴァリーヌ様」
「私のことは……『エヴァ様』と呼びなさい」


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あきゅろす。
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