プリンセス・ジャック
13
「でも、今また、同じ言葉を言わせて下さい」
雨のせいで彼女の表情はよく見えない。
「エヴァリーヌ様は……もっと素直になったほうがいいと思います」
今のマーヤは知っている。その言葉が、シャムリーを想い心を偽り続けた彼女をいかに傷付けたか。
だが、彼女はもう一度その言葉をいった。
「これで最期、だから」
「…ぅ……ぁ……」
エヴァリーヌの口から声にならない声が漏れた。
彼女の頬を伝う雫は、雨というはあまりに温かく、優しすぎる。
「わ、わたしは……!」
血の気を失っていくシャムリーの顔を見る。
「……ずっとずっと、大好きだった……愛してた……! だから……嫌、死なないで……!」
すると、シャムリーの手が涙を拭うかのようにエヴァリーヌの頬に触れた。
最後の力で、彼は唇を動かす。
「俺は……幸せです」
「シャム……しゃべらないで!」
「エヴァ様が……こんなに近くにいる」
「シャム……!」
エヴァリーヌはシャムリーに顔を近づけると、その唇に自分の唇を重ねた。
時を止めるかのような、優しい口づけだった。
長い月日を経てやっと結ばれた二人を祝福したのは――冷たい雨のみであった。
この雨はいつになったら止むのだろう。いつか止む時は来るのだろうか。
episode6 END
To be continued……?
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