プリンセス・ジャック
6
まっすぐ見つめる彼女に、シャムリーは自然に微笑みがこぼれた。
「もちろんです。エヴァリーヌ王女のお望みとあらば」
「本当! 嬉しい!」
エヴァリーヌの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「じゃあシャムも私のこと、エヴァって呼んで!」
「そんな……恐れ多いです……!」
途端に、王女の表情が変わる。
「ううー!
……エヴァって呼んでくれなきゃやだ!」
拗ねたように瞳を潤ませるエヴァリーヌ。
そんな彼女に、心臓がひっくり返りそうに感じながらも、シャムリーは彼女の名を呼ぶ。
「……そ、それでは……エヴァ様、と……呼ばせていただきます」
「『様』はいらないのに……」
「ですが……」
「シャムは私のこと嫌い?」
「そんな訳ありません!」
思わず、シャムリーはエヴァリーヌの手を掴み、力強くそう言っていた。
手と手が触れていることに気づき、幼い二人の頬は熟れた林檎のように赤くなる。
シャムリーは慌てて手を離す。
「嫌いな訳ではありません。
ですが自分は、まだまだ未熟な身。エヴァリーヌ様とは、釣り合いません……」
「じゃあシャムが今より強くなって立派な騎士になったら……私のこともエヴァって呼んでくれる?」
エヴァリーヌは、さっきまでシャムリーに触れていた手を握りしめながら、言った。
「私も……立派な王女になるから。ね?」
「……はい」
シャムリーがしっかりとそう答えたのを聞いて、エヴァリーヌははにかんだ。
「じゃあ、それまでずっと一緒だよ」
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