[携帯モード] [URL送信]

プリンセス・ジャック

 まっすぐ見つめる彼女に、シャムリーは自然に微笑みがこぼれた。
「もちろんです。エヴァリーヌ王女のお望みとあらば」
「本当! 嬉しい!」
 エヴァリーヌの顔に満面の笑みが浮かぶ。
「じゃあシャムも私のこと、エヴァって呼んで!」
「そんな……恐れ多いです……!」
 途端に、王女の表情が変わる。
「ううー!
 ……エヴァって呼んでくれなきゃやだ!」
 拗ねたように瞳を潤ませるエヴァリーヌ。
 そんな彼女に、心臓がひっくり返りそうに感じながらも、シャムリーは彼女の名を呼ぶ。
「……そ、それでは……エヴァ様、と……呼ばせていただきます」
「『様』はいらないのに……」
「ですが……」
「シャムは私のこと嫌い?」
「そんな訳ありません!」
 思わず、シャムリーはエヴァリーヌの手を掴み、力強くそう言っていた。
 手と手が触れていることに気づき、幼い二人の頬は熟れた林檎のように赤くなる。
 シャムリーは慌てて手を離す。
「嫌いな訳ではありません。
 ですが自分は、まだまだ未熟な身。エヴァリーヌ様とは、釣り合いません……」
「じゃあシャムが今より強くなって立派な騎士になったら……私のこともエヴァって呼んでくれる?」
 エヴァリーヌは、さっきまでシャムリーに触れていた手を握りしめながら、言った。
「私も……立派な王女になるから。ね?」
「……はい」
 シャムリーがしっかりとそう答えたのを聞いて、エヴァリーヌははにかんだ。
「じゃあ、それまでずっと一緒だよ」



[*back][#next]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!