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プリンセス・ジャック

 突然の出来事に、その場にいた者たちは言葉を失った。
 そこにいたのは、灰色の髪の少女。
 使用人服のスカートをなびかせ、強い力を感じる瞳で敵を見据る彼女は、ロエルの想い人でもあった。
 ……エミリア。

「お前は、何者だ……!」
 古傷の騎士が焦りの篭った声で言う。
「名乗るほどの名は持ち合わせておりません。一介の、使用人です」
 淡々と言い放つと、エミリアは今しがた倒した騎士から、武器を奪った。
 鈍い銀色に輝くそれは斧槍と呼ばれる、重量のある武器。
 槍に斧が取り付けられた形状で、更にその反対側に鉤爪がついている。
 重さや機能の多様性から扱うには熟練を要するが、エミリアはこの武器で戦うことに迷いはない。
「ロエル様」
 それを構えると、エミリアはロエルにしか聞こえない声で言う。
「……遅れてしまって申し訳ありません」
「いや……来てくれてありがとう。
 エミリア、君の働きに期待して、改めて命令する。

 敵国の騎士と戦い、勝利せよ」
「かしこまりました。お任せ下さい」
 エミリアがそういうと、同時、古傷の騎士の掛け声とともに騎士達は襲いかかる。

 襲いかかる騎士達。
 エミリアは彼らの懐を槍で突く。斧で肉を絶つ。鉤爪で武器を絡めとり、叩く。

 圧倒的――ただその一言につきる戦いっぷりだった。
 そんな彼女を何とか止めようと、ある騎士が彼女の死角から槍を振りかぶり襲いかかる。


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あきゅろす。
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