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プリンセス・ジャック


 黒衣の騎士達の中、アーミャはの体が舞う。その様子は戦うというより、暴れまわると言ったほうが正しい。
 背後から振り下ろされた剣を、軽い身のこなしで避け、その騎士の股間に蹴りをいれる。
 次の攻撃は身を伏せてかわして、騎士の顔面に拳を叩きこむ。
 たった一人の少女に、騎士達は翻弄されていた。
 それは単にアーミャの実力のせいではない。
 騎士達の攻撃には迷いがあった。グレイ・ケイシュの騎士は騎士道を尊ぶ。任務と割り切りながらも、歳の若い少女を斬ることに抵抗がある。
 また、彼らがこなしてきた鍛練の内容には、アーミャのような者を対処する方法など含まれていなかった。
 片やアーミャはそんな騎士道は持ち合わせていない。
 敵を排除することを躊躇する心など持ち合わせていないのだ。
 彼女は自分の弱点を知っている。体格――つまり、攻撃の軽さだ。
 だから、彼女は速さと攻撃の数、急所を狙うことでそれを補う。
 連続して繰り出される攻撃。
 戦う彼女は、まるで急所ばかり攻撃する爆弾のようだ。

 ロエルは剣を握りながら、冷静にその様子を見ていた。
 ……他の騎士達はまだか。
 このまま彼女が、敵を倒し続けることは無理だというのは分かっていた。
 彼らとて訓練を受けた戦士だ。
 ――爆発し続ける爆弾などありはしない。

 馬車の前方と後方に、護衛の騎士がいたはず。そう思ってそちらを見たが、見えたのは黒衣の騎士。
 どうやらそちらも囲まれているらしい。
 ロエルは内心舌打ちした。
 こちら側は戦力はほとんどない。
 大臣補佐は戦力としてあまり期待出来ない。アーミャに自分が助太刀したところでこの人数が相手では、敗北は避けられない。
 どうすれば。その結論を出す時間はなかった。


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あきゅろす。
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