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プリンセス・ジャック


「それでも想いを断ち切れないのは――ただ、未練がましい気持ちがあるからですわ。
 確かにこの想いは本物。
 だが、それを断ち切れないのは、ひどく中途半端な思いからですの。
 恋する気持ちに溺れていたいだけ。夢からさめるのが怖いだけ。
 拒絶の言葉がないなら――これから先、私を受け入れてくれることがあるかもしれない。そんな幻想のような希望を捨てきれない愚か者が、私ですわ」
 フィーネに言った、「愛しているから」の言葉は嘘ではない。
 命を賭けて戦ったことには後悔はない。ジュリアへの想いは永遠ではなくても、確かに本物だから。
 だが、恋心を持ち続けることも出来ず、決別する勇気もない自分が、悔しい。
 いつのまにか、ミルシーの頬を涙が伝っていた。
 ただの悲しみの涙ではない。どこか暖かみがあった。
 クロードはその涙を、指先で拭った。
「想いを捨てきれない気持ちとか……そういう気持ちは、よくわかる」
 クロードは慰めるように、笑みを浮かべた。

 ミルシーは彼の想いを知っている。
 直接聞いたことはないが、長い間彼と行動を共にしてきたのだ。気付いてはいた。
 だがミルシーは何もしなかった。
 それでも彼は、自分の側にいてくれる。自分を支えてくれる。
「……ありがとう、クロード……」
 そして、ごめんなさい。

 たくさんの想いを乗り越えて、少女は大人になる。



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あきゅろす。
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