プリンセス・ジャック 8 「それでも想いを断ち切れないのは――ただ、未練がましい気持ちがあるからですわ。 確かにこの想いは本物。 だが、それを断ち切れないのは、ひどく中途半端な思いからですの。 恋する気持ちに溺れていたいだけ。夢からさめるのが怖いだけ。 拒絶の言葉がないなら――これから先、私を受け入れてくれることがあるかもしれない。そんな幻想のような希望を捨てきれない愚か者が、私ですわ」 フィーネに言った、「愛しているから」の言葉は嘘ではない。 命を賭けて戦ったことには後悔はない。ジュリアへの想いは永遠ではなくても、確かに本物だから。 だが、恋心を持ち続けることも出来ず、決別する勇気もない自分が、悔しい。 いつのまにか、ミルシーの頬を涙が伝っていた。 ただの悲しみの涙ではない。どこか暖かみがあった。 クロードはその涙を、指先で拭った。 「想いを捨てきれない気持ちとか……そういう気持ちは、よくわかる」 クロードは慰めるように、笑みを浮かべた。 ミルシーは彼の想いを知っている。 直接聞いたことはないが、長い間彼と行動を共にしてきたのだ。気付いてはいた。 だがミルシーは何もしなかった。 それでも彼は、自分の側にいてくれる。自分を支えてくれる。 「……ありがとう、クロード……」 そして、ごめんなさい。 たくさんの想いを乗り越えて、少女は大人になる。 [*back][#next] [戻る] |