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プリンセス・ジャック


 マーヤは首をひねった。
「世界一って……なんで分かるの? 世界中の剣と比べた訳じゃないのに」
 馬鹿にするのではなく、単純に疑問に思ったことを口にしたのだ。
「父さんが信じた。俺が信じた。そして、今日までこの剣は折れていない。――だから、この剣は世界で一番強い」
「……じゃあ私の剣も、世界一の剣になるかな」
 マーヤは自分の持つ剣を見る。
 シャムリーの剣と比べても、大きく重さもある。師から与えられ、マーヤ自身がこの剣を使うことを決めた。
 お前には大きすぎると、あるグレイ・ケイシュの騎士に言われた。
 実際、今の彼女では十分に使いきれてはいない。
 ……でも、信じることが出来たら――
 少し、明るい気持ちになりかけていたマーヤを、シャムリーは切り捨てるように言った。
「きっと無理」
「な、なんでぇ!?」
「守るべきものがないから」
 思わず、息をのんだ。まさに、シャムリーの言う通りだったからだ。
「シャムリーは、何を守るために騎士になったの?」
「この剣に込められた、父さんの誇りを守るため」
 父さん。その単語に少し――本当にほんの少しだけ、胸が痛んだ。
「私は駄目だね。守るものが欲しくって騎士になりたいと思ったんだもん」
 マーヤは自嘲気味に言った。
 対するシャムリーはやはり表情に乏しく、こたえた。
「確かに駄目」
「はっきりいうね」
「……でも、騎士になった後、守るべきものを得ることもある」
 そう言われ、マーヤは彼が自分を勇気づけようとしてることに気づく。
 無愛想な表情故、見た目からは分からないが彼なりにマーヤを気遣っているのだ。
「ありがとう」
「何もしていない。礼をいう必要はない」
「うん。でも、またここで――グレイ・ケイシュで頑張ろうって気になったよ」

 マーヤは決意する。
 自分の剣をいつか最強に出来るように。そのために、自分は今出来る精一杯をするのだ。




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あきゅろす。
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