プリンセス・ジャック 3 マーヤは首をひねった。 「世界一って……なんで分かるの? 世界中の剣と比べた訳じゃないのに」 馬鹿にするのではなく、単純に疑問に思ったことを口にしたのだ。 「父さんが信じた。俺が信じた。そして、今日までこの剣は折れていない。――だから、この剣は世界で一番強い」 「……じゃあ私の剣も、世界一の剣になるかな」 マーヤは自分の持つ剣を見る。 シャムリーの剣と比べても、大きく重さもある。師から与えられ、マーヤ自身がこの剣を使うことを決めた。 お前には大きすぎると、あるグレイ・ケイシュの騎士に言われた。 実際、今の彼女では十分に使いきれてはいない。 ……でも、信じることが出来たら―― 少し、明るい気持ちになりかけていたマーヤを、シャムリーは切り捨てるように言った。 「きっと無理」 「な、なんでぇ!?」 「守るべきものがないから」 思わず、息をのんだ。まさに、シャムリーの言う通りだったからだ。 「シャムリーは、何を守るために騎士になったの?」 「この剣に込められた、父さんの誇りを守るため」 父さん。その単語に少し――本当にほんの少しだけ、胸が痛んだ。 「私は駄目だね。守るものが欲しくって騎士になりたいと思ったんだもん」 マーヤは自嘲気味に言った。 対するシャムリーはやはり表情に乏しく、こたえた。 「確かに駄目」 「はっきりいうね」 「……でも、騎士になった後、守るべきものを得ることもある」 そう言われ、マーヤは彼が自分を勇気づけようとしてることに気づく。 無愛想な表情故、見た目からは分からないが彼なりにマーヤを気遣っているのだ。 「ありがとう」 「何もしていない。礼をいう必要はない」 「うん。でも、またここで――グレイ・ケイシュで頑張ろうって気になったよ」 マーヤは決意する。 自分の剣をいつか最強に出来るように。そのために、自分は今出来る精一杯をするのだ。 [*back][#next] [戻る] |