、 僕はモデルのRieを数回見たことがあるだけで、今までの先輩のことは分からないのだけれど、きっと優しさが増したんだと、そう思った。 とても、優しい目をしていたのだ、右京理樹という人は。 僕は上へあがっていく右京先輩を見送り、教室に戻ることにした。 途中から入るのは少し嫌というか恥ずかしいのだが、さすが特進科というべきか、誰も興味を示さない。 だから早く行こう、そう思って少し駆け足にしたとき、僕は彼と偶然出会った。 「……お、大志じゃねーの?珍しいな、サボリ?」 「翼先輩!いえ、図書室にいたんですけど時間に気づかなくて…」 「ははっ、俺もだ。サッカーしてたらチャイム鳴ってよ。校庭から遠くて困るよな」 階段を駆け上がってきた先輩は、今が冬だというのに汗をかいて暑そうにしていた。 けれど薄着な翼先輩を見て、僕はブルッと体を震わした。見ているこっちは寒くなってくる。凄いなぁ、なんて感心してしまった。 そして僕たちは自然と一緒に歩き出した。 授業中というせいか、廊下には僕と先輩だけ。ペタペタと歩く音が響いて、それが面白くなった僕は色んなタイミングで歩いたりしてみた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |