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サラッと流れた髪を目で追いながら、僕はゆっくりと頷いた。
これで未來先輩と会うのは2回目。美術の絵画を専門としているなんて知らなかった僕は、恐る恐るそばに近寄った。
見てもいいよといわれた絵を、先輩の後ろから見てみる。
「うわ…スゴ…ッ」
「……そう?」
「はい、なんていうんだろ…うまい、っていうのもあるんですけど、動き出しそう…」
鉛筆で描かれた、サッカーをしている人の絵。
プロを目指している人にうまい、なんて何の誉め言葉でもないのかもしれないけど、僕は素直にそう思った。
今にもボールを蹴り出しそうだ。
僕がキラキラした目で見ていると、未來先輩はクスッと笑って振り返ってきた。
僕はこのとき、見返り美人を思い出したのだが、本人にはいえない…よなぁ。
「率直な意見、ありがとうね」
「い、いえ…っ、先輩は人物画専攻なんですか?」
「ううん、基本的に何でも描くよ」
「……先輩の話、聞きたいです…」
何となくだけど、ふと聞きたくなった。だから聞いた。今までに描いたという絵を見せてもらいながら。
どうやら本当に何でも描くらしく、人物画に始まり風景画や抽象画など、色々あった。
どれかのプロを目指すという訳ではなく、単に絵を描くのが好きだから描いてるんだって。
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