、 「……ここが最後…?」 僕の目の前には美術室。ここを見たら今日は帰ろう、そう決めて静かにドアを開けた。 そして思わず手を止め、息を飲んだ。 窓から入る夕日に照らされていた未來先輩。髪が赤く輝き、影を落としながら絵を描く姿は、綺麗だった。 窓際に座って外を見ながら手を動かして。ときおり楽しそうに口元を緩ませる未來先輩は、どこからどう見てもやはり綺麗だ。 僕の見ている風景が、もうこれ自体が絵なんじゃないのかと思うほど。 「……綺麗…」 「えっ?……あれ、大志くん」 「っあ、ごめんなさ、邪魔しちゃいましたよね…?」 「え、ううん?そんなことないよ」 そう微笑む先輩も綺麗。 口に出てしまったことは自分でも驚いたけれど、男の人にこういうのはおかしいのも分かっているけど、綺麗としかいいようがないのだ。 今思えば、このときの僕はとてもおかしかった。小説を書いているのに、綺麗しかいえないなんて。 「あの…美術部は未來先輩、1人なんですか…?」 「へ…あ、ここは特進科の美術室だから僕しかいないよ」 「あ、そうだったんですか!?」 「ふふ、うん。……見てく?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |