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 本人ですから、とはいえない。だが先輩はそうだよね、と頷いて本をパラパラと捲り始めた。
 この本は宝物だと、そういってくれた先輩。僕には2つの意味があるようで、でも直接は聞けずにいた。

 好きな作家の直筆サイン。
 そして…後輩からプレゼントされたもの。だからこそ、あの本は先輩の宝物になっているのではないだろうか?
 僕はなぜか、気分が落ち込んでしまった気がした。そのままただ何となく、楽しそうに本を捲る未來先輩を見つめた…。


【白魚のように白く滑らかで綺麗な手は、彼女の頬を滑り、桜色の唇へとたどり着いた。ノックをするように人差し指で唇を叩き、開いたそこへそっと差し込む──】


「──……ぃ、…ん?大志くんっ!」

「っあ、はいっ!?」

「大丈夫?ボーッとしてたけど…」

「ぇ、あ、ごめんなさっ。何でしたか?」


 ああ、いけない、どうやら僕は先輩の手に見とれていたようだ。
 頭の中で変なことを想像してしまったことが恥ずかしく、頭を振って何があったのか聞く。
 それでも今思ったことをあとでメモしようと思う僕がいた。引越で色々気が動転してるのかもしれない。



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