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 僕は急かす先輩に煽られ、表紙をそっと捲った。そしてそこにあるものを確認し、僕はどうしていいか分からない状況に陥る。
 ……そこにあるのは、見慣れた…書き慣れた、僕のサインだった。もちろん忘れるはずがない、これは初めてのサイン会のときの本なのだから。
 ただ、それを先輩が持っていて、この僕に自慢してくれる。この状況が困るのだ。


「さっき見たとき、大志くんのにはなくて…つい自慢したくなっちゃったんだ」

「へ、へぇ…本人に会った、んですか?」

「……ううん、その日僕は違う用事が入っててね、行けなかったんだ」


 会いたかったのに、そう残念そうに呟く先輩に、なぜか心が踊った。
 もしかしたら、僕のファンだという人に会って話を聞くのが初めてだからかもしれない。だから、こんなにドキドキしているのだろう。
 僕はそう決めつけ、なぜ持っているのかを問うた。


「……学校の仲のいい後輩がね、くれたんだ。僕の好きなものを覚えててくれて、本なんて興味ないくせに…」

「そう、でしたか…」

「大志くんは?会ったこととか、ないの?」

「えっ…あ、はい。なかなか…」



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