10 (ふふーふん、ふっふー♪) ──ペコッ、ペコ、ペコリンッ ご来賓に、先生たちに、ステージに。 その頭を下げる速さと、体の横に当てられた手がペンギンになっている異常さに、誰もがこのあとの心配をしただろう。 徐々に順番が近づき、そして…、 「水無月 雨音」 「お、はいはい」 霜月に呼ばれ、普通に返事をしながら理事長の前に立つ雨音。 まぁ、その返事は見逃そう。 理事長は霜月に渡された卒業証書を手に、以下略〜と読み上げ、雨音へ差し出した。 ごく普通の流れである。 ……そこで雨音が受け取れば、ね? はーいここからが水無月雨音な本領発揮じゃぁあ!! 「………」 「『………(ゴク…ッ)』」 「……お、おい水無月、受け取れ…」 「うむ…しーちゃん、僕は……僕はやり残したことがあるのだよ」 ──ザワッ 「なんと僕としたことが会長になるのをすっかりきっかり忘れていたのだよ!!」 「『はぁあああ!?』」 あ、しまった財布忘れた! なノリで忘れ物宣言をする雨音。 [*前へ][次へ#] [戻る] |