10
うぇーんと目を覆い、泣き出してしまった雨音。呼ばれた睦月は慌てて駆け寄り、雨音を優しく抱き締めた。
まさかの展開にみんな目が点だ。
「エエやん雨音の好きにさせたればっ!生徒泣かすなん、サイテーやなっ」
「あ゙あ゙!?」
「……ぃっ、や…そのぉ…」
「ちょっと、さっきまでの威勢は何だったわけ?雨音も、泣き真似したって霜月先生は聞いてくれないよ」
「……ちぇっ、いーもんいーもん。僕を止めるものはいないのさっ」
弥生に指摘され、睦月の腕の中でヘヘンと笑う雨音。
泣くわけがないのだ。
それに気づけない睦月は雨音バカなのだ。
けれど来てくれたことは嬉しかったのか、腕の中で睦月を見上げ、
「ありがとむっちゃん。もう離して?」
と、口元の笑みを浮かべていったのだ。最後は首を傾げて。
もう睦月デレデレ。
離すどころかより強く抱き締め、ぐりんぐりんと頬ずりを始めた。
雨音の髪がグシャグシャになっていく。
「うっ……おぁ、痛い…」
「かわえーっ!ありがとやて!弥生聞いたかっ?!」
「聞いた聞いた」
(あぁー何で話に入っちゃったんだろ…)
(俺の存在はムシか)
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