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(………アイツが逃げた…?)
さすがの卯月も疑問に思ったらしい。
……が、いかんせん解剖に引き続き雨音と2人きりになれそうな予感。
ごそごそと教室を漁る雨音を見つめながら、卯月はこのあとのことも知らずにニヤリと笑った。
さてさて、用意するものはあればあるだけいいでしょう。アルコールランプにバーナー、試験管はあるだけ欲しいし、ピンセットも顕微鏡も、スポイトもとにかく何でも。
雨音は手慣れたように机に使いやすいようセットしていく。
「………何か作るのか」
「何っていうのは決まってないんだけどね、作れたらいいなぁって」
「………手伝うか」
「うむ…気持ちだけ受け取っとくのだよ。僕は僕のやりたいようにやらねば気が済まぬ」
「そ、そうか…」
チッ、と小さく舌打ち。
雨音は目の前のものしか見ていなく、相手にされないことが悔しいのだろう。
仕方ない、と少し離れて見ていれば、薬品の入った棚から選ぶわけでもなく、ほとんど取り出し始めているではないか。
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