○
そいつは一度視線だけをこっちへ寄越し、
また宛てもなく視線をさまよわせた。
「…………………おい」
「………………………………」
「チッ……」
反応なしかよ。
怖がりもしねぇ、
感情のないやつ。
なのにそれが、
なぜか心地よかった。
視界に入れねぇのはムカつくが、変な目で見られるよりは全然いい。
ただの1人の人として見られてるようで、不思議と嫌じゃねぇ。
俺はそれから病院に行ったときは、あいつの1つ横に座ることにした。
一度こっちをみて、
また戻るその目。
いつの間にか…
こいつに惹かれてる俺がいた。
「なぁ、あいつはいつも何してんだと思う?」
「知らないですよ。聞いてみたらどうですか?」
「俺も見てみてぇなー」
あいつは何をしてるのか。
なぜそんな目をしてんのか。
名前は?年は?学校は?
怪我してんのか?病気?
暇つぶし?
俺がこんなに人に興味を持つのは初めてで、
次に会えたら聞いてみようと思う俺がいた。
…………らしくねぇ。
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