■ ─冬樹side─ 「朱雀……………朱雀」 かっこよくて、 いい名前だと思う。 初めて呼んだそれに、 あなたは凄く嬉しそうな顔をした。 名前を呼んだだけなのに。 その顔をもっとみたいと思ってしまった。 あなたと見た桜は、 凄く綺麗に見えた。 そう思ったのは初めて。 何で、とは思わない。 あなたとだから。 「好き……です」 資格がないのは分かってる。 でも……後少しだけ、 体が保つ少しの間だけワガママをいいですか? もう俺の中はあなたでいっぱいなんです…。 「やっぱり来ちゃったわ……え、冬樹?」 「…………………」 「泣いて…るの?どうしたの?」 「俺の病気は、いつ…治るの?」 「っ……」 「病院から出ちゃ、いけないの…っ」 「冬樹…」 その日、10年振りくらいに笑って、涙を流した。 生きるのって、 こんなに大変で疲れるものだったんだ…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |