9 「炭酸だと少しばかり腹も膨れる。よし、コーラを買うといい、青野!」 「えっ、いやあの、おれお茶…っ」 「僕はグレープにしよう。オレンジは微妙だ、おすすめはしない」 完璧な持論をぶつけ、炭酸を勧めてくる経理に蒼は全てを諦めた。次からは絶対一緒には買わないと心に誓い、渋々コーラを買う。それを見て満足げに経理は頷き、炭酸グレープを買って先に部室へ戻っていった。 「…嫌いじゃないんだけど、なぁ」 今はお茶の気分だった。 でも買ってしまったものは仕方ない。我慢しよう、と蒼もそのあとを追おうとして、入れ違いにやってきた豊に驚き足を止めた。 「ぶ、部長も何か買うの?」 「…ああ、アオはコーラか」 「あはは…お茶がよかったんだけどねー。いやほんと、橋爪先輩色々凄いわ」 「あいつと買いもんはいくな、うぜぇから。…おら」 「へ?…え、っと…何スか部長さん」 ん、と差し出されるペットボトル。ラベルは緑。蒼が本当は飲みたかったお茶が入っている。 蒼はキョトンとそれを見つめ、豊に視線を戻した。頭にハテナを浮かべる蒼に豊は舌打ちをし、蒼が持っていたコーラを奪い取る。 「うぁ、それおれの…っ!」 「だから、これやるっつってんだろ」 「お茶…え、でも」 [*前へ][次へ#] [戻る] |