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緊張と、豊のそのかっこよすぎる余裕な笑みにバクバクと心臓が音をたてる。このままだと発作が起きてしまいそうで怖い、が、…大丈夫。
豊が、いてくれる。
蒼たちはようやく生徒を騙すべく、動き出した。
各階に設けられているフリースペース。そこには自販機とベンチがあり、それこそ自由に時間を過ごせるようになっているのだ。
幸作はすでにそのうちの1つに腰掛けている。その正面に経理、横に置いたかばんに隠しカメラが入っているのだ。
ターゲットは、幸作と同じベンチへ座った生徒。
「のっ、喉渇いたナー。何飲もうカナー」
「クッ、…へったくそ」
「っ…あれ、部長見て、何か落ちてる」
「あ?…"ペンキ塗りたて" だぁ?」
もちろんその紙は蒼が始めから用意して持っていたもの。
しかしそれを読み上げたことにより、食べ物を摘みながら談笑していた2人の生徒はピタリと動きを止め、自分たちの座るベンチを見た。
『…いや、まさか、なあ?』
『乾いたからとったんだろ?ははっ』
「…っし、いくかぁ!」
『っ、…う、嘘だろっ!?』
『おいおいおいおいっ!』
まぁ大丈夫だろうと安心していた2人の目に飛び込んできたのは、隣にいた生徒…幸作が立ち上がったことによって見えたその後ろ姿。
茶色のペンキがしっかりと制服についているじゃないか。
まさか本当に塗りたて!?
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