[携帯モード] [URL送信]
28
いざという時、蒼は逃げることが出来ない。走れてもせいぜいゆっくりいって50m程度。全力なんて出せば25m保つかどうかといったところだ。

だから蒼の役目は、"捕まらないこと"。終了時、自分のリボンは得点にして10ポイントになる。捕まえたリボンが5ポイントと考えると、2本死守するのはかなり高得点となるのだ。


トイレに入り、さらに個室に入る。まるで新設されたばかりかのように綺麗なトイレにホッとしつつ、蒼は便座へ腰掛けた。

ドアは閉めない。
閉めてあるとそこにいるといっているようなものだ。人がきたらドアの内側に。そこでリボンが取れるなら取る、というのが蒼へ与えられた作戦と使命。

でも本当は。



「…走りたい、なぁ」



みんなと一緒に走りたい。
風を感じてみたい。…恐らく一生無理だけれど、たまに羨ましく思ってしまう。

負に陥りかけた蒼はプルプルと首を横に振り、やがて聞こえてきた足音に息を潜めるのであった。







スタート合図とともに駆け出した拓は、作戦通り校舎からモールまでの間に身を隠した。

場所決めと、そしてしばらく時間が経つまで隠れること、作戦のうちの2つだ。


[*前へ][次へ#]

28/75ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!