27
顔を真っ赤にして怒鳴る経理を蒼はなんともいえない目で見つめ、そしてポケットの中を確認した。
ちゃんとある、大事な大事な吸入器。それを強く握り締め、ニヤケそうになるのを必死に抑えた。とてもとても、楽しみなのだ。
「蒼は無理しすぎんなよっ!蒼の分も俺がとってきてやるぜ」
「幸作…!っ、おれはせめてでもこの2本死守するから」
「蒼ファーイトォ」
「たっくんこそ頑張って下さいよ。経理より少ないなんて恥じですからね」
「ゔ…たっくんいわないで下さいヨォ」
こそ、と蒼の後ろに隠れて朋也の笑顔から逃げる拓。蒼が「たっくん」と呼び、それを面白がって朋也が真似をしているのだ。
その横では経理が騒いでいるが朋也は綺麗にシカトし、そしてスタートの時間がやってきた。
『それでは部活対抗鬼ごっこ、スタートです!』
「さて、いきますか」
「よっしゃー目指せ20本!」
「もっと取れ幸作」
みんなが散っていく。
作戦の1つとして、各自持ち場を決めた。よく動く幸作は全範囲とし、経理はモール、拓はモールから校舎までの間、朋也は校舎、豊は校庭。
…そして蒼は。
「部活棟の1階トイレ…は、ここか」
(…足引っ張んなきゃいいけど)
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!