20 B:幸作
「っ…お、れ、おれは…」
再び豊に告白された。
それは酷く動揺を誘うもので、けれど蒼は、自分の心が一回目のときよりも弾んでいないことに、気づいた。
それどころか幸作の顔が浮かんでくる。いつも笑いかけてくれ、友人の様で、けれど恋人として優しく甘く接してくれる幸作。
思い出せば出すほど気持ちは弾み、自然と口角があがる。
(ああ、おれはもう…)
「アオ…?」
「豊…ごめん。おれにとって豊とのことは、もう終わったことなんだ。おれは、ちゃんと幸作が好きだ。だから…ごめんなさい」
「っ…終わったこと、か」
「でも、豊とは仲良くしていきたい。友達として…って、これはワガママすぎんのかな」
へらり、と笑っていえば豊は何もいわず俯いてしまい、蒼は困った顔を浮かべた。
気持ちはとても嬉しかった。
でももう、蒼に応えることは出来ない。今度は、豊が諦める番だ。
「…はぁ、んな顔すんな、アオ」
「ゆ、たか」
「分かりきってたことだ。変なこといって悪かったな」
「っ、そんな変なことだなんて!思ってない…凄く、嬉しかった」
「クク、そうか、ならいい」
いつもの不敵な笑みに、蒼はホッと心を撫で下ろす。
しばらくはギクシャクするかもしれない。けれどまた、親しい友人として笑い合う日がくることを、蒼は夢見るのであった。
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