20 A:豊
「っ…お、れ、おれは…」
ぎゅ、っと目を瞑る。
好きだといわれ、蒼が心の底から感じたのは…歓喜、だ。嬉しくて、全身が熱くなり、心臓がうるさく音をたてる。
そんな姿も見られているのが熱い視線で分かり、蒼はふるりと体を震わせた。
「…アオ」
「っ、…で、でも、豊には柚木くん、が」
「別れる。…アオの応えがどうであれ、あいつとはもう付き合えねぇからな」
「おれが好き…だ、から?」
「ああ、そうだ」
花梨には悪いけど、と。
けれど蒼にも、幸作がいる。いつも蒼のことを想ってくれ、側にいて優しくしてくれた幸作が。
…そう、思うのに。
蒼の心は、やはり初めから決まっていて。
「ゆ、たかのバカ…ッ!なんで、何で今頃…っ、おれがどんだけツラい思いしたと思ってんだよぉ!」
「…悪かった」
「ゔぅ、…好き、おれも豊が好きっ。次浮気したらほんと許さないし…っ」
「クク、アオもな。もう…離してやんねぇよ」
近づく2人の距離はやがてゼロになり、蒼も豊も、それはそれは幸せそうな顔を浮かべるのであった。
◆
「…そ、か、豊と…」
「…ご、ごめんな、幸作。おれ、ほんとに幸作のこと、利用したことに…」
「謝んなって、代わりでいいっつったの俺だし?まぁなんとなくそんな気ぃしてたしさ、しょうがねぇって」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!