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なにいってるんだ!?と蒼の顔が耳まで真っ赤に染まる。何もこんな人前で…とやんわり断りを入れた蒼だが、幸作は引かなかった。
ここだから…豊の前だからこそ、してほしいのだろう。
小さな舌打ちは誰からしたものか。それを考える余裕もないくらい、蒼の頭は混乱していた。
「付き合ってんだからいいじゃん、な?」
「で、も…」
「おい嫌がってんだろうが」
「は?豊に関係ないっしょ。それに嫌がってんじゃなくて恥ずかしがってんだよ。なー蒼?」
確かにその通りだ。
そもそもキスはもう何回かしているし、今更ではある。けれど人前…しかも豊の前ということがどうしても行動に移せなく、蒼は困ったように幸作を見つめた。
なぜ、こんなことを今要求するのか。分からない。けれど、幸作の瞳は真剣なものだった。
思えば幸作からここまで強く要求されたことは、一度だってない。
いつも蒼に合わせてくれ、適度な求愛行動で抑えてくれていて。そんな幸作からの、どうしても、というお願い。
「っ…ああもう、い、一回だけだからな!///」
「マジ!?じ、じゃあ…ん!」
「…おい」
「ぅー…、…っん」
「っおい!」
――バンッ!
机が叩かれ、大きな音が響いた。蒼と花梨は驚いたように豊を見つめ、拓は怯え頭を抱え、幸作はしてやったりな顔をする。
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