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「ふ、ざけんじゃねぇ…!アオに何した!!」
――ガッ
「おい、何をしてるっ、喧嘩はよそでやれっ」
「そうですよ、なんで大沢が怒るんですか?もう別れた…捨てた、蒼くんのことで」
「テメェェ…ッ」
縋るような手に気づかず、朋也の胸ぐらを掴みあげ、凄んできた。だが朋也は狐目をより細めて鼻で笑い、ギャイギャイ騒ぐ経理を一瞥してから締め上げてくる豊の手を、思いっきり握り締める。
ギリ、と音がしそうなほど強く掴んでくる朋也に豊は思わず手を離し、頭をかきむしった。
「クソッ、なんで何もいわねぇんだ…っ」
「他人になったからでしょうね。もういいじゃないですか、蒼くんのことは。ほら、そこに可愛らしい彼女がいるわけですし」
「っ…それとこれと、は…」
違う、とは言い切れなかった。
朋也につられ花梨を振り返ってみれば、ひどく不安げにこちらを見ていたのだ。
あの表情には覚えがある。
別れる前、蒼が必死に隠そうとしていた表情だ。
「ゆ、豊くん…大丈夫だよ、あの、脇本くんが助けにきたっていってたし…ね?」
「ええ、もう入れるだけでしたのに、邪魔されちゃいましたよ。今は幸作くんのモノですし、また手が出せなくなっちゃいました」
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