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蒼から豊をとったのだ。
多少気にはしていたらしい花梨がホッとした様子を見せ、朋也はおかしそうに笑った。
けれど豊は。
ぐぐ、と眉間にシワを寄せ、何か文句をいいたそうな顔をした。
「…聞いてねぇ」
「そりゃ大沢にいわなきゃいけない理由などないでしょうしね。見かけも恋人っぽくないですし、目をそらしていた大沢が気づくはずもないでしょう」
「っ、…うぜぇな」
「ふふ、では知らないことだらけついでにもう一つ。蒼くん、なかなかいい声で鳴きますねぇ。泣くまいと堪える姿がなんともたまりませんでした」
「…ぁあ゙?」
「いえね、人のモノに手を出す趣味はないんですが、あなたが蒼くんをフった直後は彼、独り身になったわけじゃないですか。ふふ、だから僕も自由にさせてもらいましたよ」
あ、もちろん知りませんでしたよね?まぁ本人はいわないでしょうし、それを助けに入ったのが幸作くんということも知らなかったんでしょうね、と。
どんどん顔を怖くしていく豊を煽るように、面白おかしそうに自分のしたことを話す朋也。
花梨は平然と話す朋也に自分が未遂にあったことを思い出したのか小さく震え、豊の後ろに隠れ服をギュウッと握り締めた。
大丈夫だ、と慰めてほしい気持ちがあったのかもしれない。けれど豊は。
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