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「…待ったか」
「平気。おれらのクラス早く終わっただけだから」
あの日は豊が待っていた。
けれど今日は呼び出した蒼が、ちゃんと部室の中でサッシに腰掛け待っていて。外はまだ明るい。あのときと正反対だな、と蒼は思う。
あの日のことを思い出して、蒼は辿っていく。
「…ねぇ豊、これだけお膳立てしてあげてんのに、何かいうこととかないの?」
「な、に」
「豊いってくれたよね、自分にもっと自信持てって。あの言葉、嬉しかった」
「…っ」
「…別れよう、豊」
目を伏せて、今度は花火なんかに邪魔されず相手にハッキリ伝わっただろう、関係を終わらせる言葉。
豊は多少なりとも罪悪感を感じているのか、目を泳がせ言葉を詰まらせる。
「お、れは…」
「もう、さ、豊の気持ちが柚木くんに向いてんのは嫌でも分かるし、それ見てるだけってのももうツラいし。でもズルズルと恋人関係引きずってたくないんだ」
「…わりぃ」
「っ――謝んなよ!」
「アオ…?」
「ほら、豊はさ、そんな弱気でいちゃらしくないんだって。俺様でいてこそ、豊だよ。…終わらせて、豊」
「…アオが気づいてることに俺も気づいてた。もっと早くいえばよかったな、…俺と別れてくれ、アオ」
「……うん、今まで、ありがとう」
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