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たまたまだった。
たまたま通りかかった教室から豊の声がして、何となく覗いてみたら、これ。
"まだ" 彼氏である豊が、ついに気持ちを向けるだけでなく行動に移した瞬間。いや、もしかしたら蒼が知らないだけでもっと前からしていたのかもしれない。
こんな場面を見て、よく取り乱さないなと、蒼は自分の冷めた気持ちに驚いた。
(…うん、まぁ、もういいか)
豊が何もいってこないから、関係をなあなあにしていた。もしかしたら自然消滅を狙って何もいってこなかったのかもしれない。
けれど蒼は、ちゃんと2人で会って全てを終わりにすることにした。ようやく踏ん切りがついた、というより、キッカケが出来た、か。
蒼は決して声をかけることなくその場を立ち去り、少しして携帯を取り出し、メールを作成した。
【大事な話がある。明日、部活前に少し早めに部室にきてほしい。待ってるから】
…その1時間後、明日の部活は休みにする、というメールが豊から全員に宛てて送られてくるのだった。
◆
あの日、部室に入ると誰もいなくて、向かいの教室から声がかかった。
その中で豊はサッシに腰掛け、入口を見ていてすぐに目が合って。なんていいシチュエーションなのか、そう思ったことを今でも蒼は鮮明に思い出せる。
だから。
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