[携帯モード] [URL送信]
21
「ったくどんくせぇな、相変わらず。走ったら発作起こすこと分かってんのに」

「あー…はは、つい楽しくて」

「喘息かなにかなのっ?今は体調大丈夫…?」

「平気、いつものことだし。薬も、あるし、うん」

「まぁ何ともなくてよかったな、アオ」

「……うん」



ポン、と頭を撫でられる。
だがそれが心に響いてこないのはなぜだろうか。蒼だけじゃない、幸作もどこか非難を浴びせるような目で豊を見ていた。

なんというか、それだけ?といいたくなる豊の答え。相変わらず、走ったら発作起こすの当たり前。…それだけ?


(あ、おれ嫌なやつだ)


醜い感情が湧き上がってきそうで、蒼は無意識に胸のあたりを握り締め、歯を食いしばった。

それに気づいたのは幸作と拓だけ。心配そうに見てくる2人にへらりと笑顔を作り、蒼は全てを胸の奥へ押し込めた。



「…アオ、今日あとで部屋にこい」

「え?あーごめん。今日はもう疲れちゃったから…」

「あ?…ああそうか、じゃあ仕方ねぇか」



こういう日は、豊の気分が高まっているから。それを分かっていて蒼は断りを入れた。初めて、蒼が豊を拒んだのだ。

小さく舌打ちをして花梨をチラリと一瞥した豊に気づいてしまった蒼は、"その日" は近いかもな、なんて人事のように思うのであった。


(誰かの変わりにとか、性欲処理にだけはなりたくないよ、豊)


[*前へ][次へ#]

21/40ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!