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こんなにも近くにいるのに遠くに感じ、蒼は震える手で水鉄砲を強く握り締めた。



(敵チームなんだから一緒にいないのは当然のことだろ、おれっ)

「いいか、俺から離れんじゃねぇぞ花梨」

「う、うん、ごめんね足手まといになっちゃって…」

「危ねぇ目に合うよりはいいだろ。…チッ、またか…いくぞ!」

「あ、待ってよ豊くん…っ」


――"蒼くんは柚木花梨を…"

――"勝負ですから、何をしても"



朋也の言葉が、ぐるぐると頭の中を占めていく。今なら狙える。先にいく豊ではなく、よろけて後ろを追いかける花梨を。

撃ったら豊はどうするのか。責めるのか、仕方ないと諦めるのか、参加している自分に驚くのか、凄いなと誉めてくれるのか。



「――ひゅっ!カハッ、ぁ、ゲホッ、…っひ」

(し、まっ)

『いたぞ!…って、お、おいっ?』

『え?…わ、大丈夫かよ!?』



息がうまく出来なくなり、蒼は慌てて吸入器を取り出した。けれど、胸の奥に生まれたどす黒い醜い感情までは消してくれず、蒼は泣きたくなった。

発作はすぐに治まり、そのまま豊たちを追いかけてきただろう他のチームに撃たれ、蒼は死者として1人寂しくホールへ向かうのであった…。


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あきゅろす。
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