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「えっ、俺はいいけど…豊じゃなくていいのか?」
「…うん。豊、忙しそうだし」
何が、とはいわないが、察しがついた幸作は顔をしかめ、それでもへらりと笑顔を見せてくる蒼に、暇だから付き合うと答えた。
本当は豊といきたかったのだろう。本土へいくこと自体手続きが面倒なためデートは学園内で済ますことが多く、だからこそこのチャンスに外でデートを、と。
けれどお誘いは失敗に終わった。失敗してもその原因が花梨だとしても蒼は必死に笑顔を浮かべるため、幸作も拓も心配しているのだ。
「…俺から一言いってやろうか?」
「え、いいよいいよ。しょうがないって、確かに危なっかしそうだし、豊優しいし」
「無理すんなよ、蒼」
「…うん」
(優しかったのは蒼にだけなんだけどな…)
その優しさが今は花梨にも向いているということは。あまり考えたくない、でもそうだとしたら早く別れてしまえと幸作は思ってしまい、頭を振った。
もしかしたら今だけかもしれない。落ち込む蒼が早く元気になってくれればいいなと、心の中で願うのであった。
◆
豊が花梨に付きっきりになり部活にも出なくなって一週間。花梨が編入してきてからは2週間が経ち、毎年この時期に開催される親睦会の日がやってきた。
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