12
何やら争うような声が奥の教室から聞こえ、2人は足を止めた。しかし豊はそれに関わりたくないらしく、蒼の手を引いてシカトしていこうとしてしまう。
いいのかな、と困惑している蒼は、次にもっとハッキリ聞こえてきた声に、あれ?と思考を巡らせた。やめて!と、少し高めの声。そうだこの声は…、
「柚木…?」
「あっ、ま、豊!」
「っ、アオはどっか隠れてろぜってぇくんな!」
「…っ、豊…」
(くんな、か)
確かに自分がいても足手まといなだけか、と理解しようとするも、豊にいわれたその言葉が胸に突き刺さる。しかもあの焦りよう。
豊は仲間には優しい。
それは十分分かっているけれど、なんだか胸がモヤモヤするような、そんな焦り方だった。大切な人が襲われているかもしれない、という、あまり考えたくない焦り方。
蒼は渡された2つのカバンをギュウッと抱き締め、身を隠すでもなく声がした方へ近づいていく。だが人が飛び出してくるのが見え、蒼は咄嗟に近くの教室に逃げ込んだ。
(やっぱ強姦だったのかも…)
未遂に終わっていればいい。
そう思いながら人が出てきた教室へ早足で向かい、そして。
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