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「さ、さすが豊、やっぱ優しいね。分かった、ちゃんと案内してあげなよー?」
「クッ、いわれなくても」
((蒼…))
笑っている、けれど笑いきれていない。その痛々しい姿に拓と幸作は心配そうな顔をするが、そう、まだ初日。
豊が優しいことは蒼自身一番よく知っているし、この程度で嫉妬したり不安になっていては精神が保たない。恋人は自分。そうしっかり確認をし、蒼は押し寄せる不安から逃げるのであった。
◆
「…そろそろ帰るか」
「ふん、今日も無駄に時間を過ごしてしまったな」
「ならなぜ部活を続けてるんです?1人辞めても5人いれば部活は成り立ちますから、辞めてもいいんですよ?」
「僕がいなくなったら誰が部費の管理をするんだ?困るだろう、僕がいないと」
「そうでもないけどそうですね」
あ、めんどくさくなったんだな、と経理と朋也の会話を聞いていた蒼たちは密かに思い、先に帰っていく先輩2人に挨拶をした。
なんでも部、といっても普段は何もしていなく、ただだべったり課題をして過ごすだけだ。
今日もそう。何だかんだで2時間ほどのんびり過ごし、豊が声をかける。
「お、オオオレ、トイレ寄ってくから先いってて…っ」
「あ、俺も。じゃーまたあとで、会えばだけど!」
「おーばいばーい」
「いくぞ、アオ」
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