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「チッ、こんなことになるなら拓一人でいかせりゃよかったか…」
「えええそんなぁぁっ」
「あはは…でも、たっくんのおかげでおれ怖くなかったし」
「騒いでたのはたっくん一人でしたからね」
「…ゔ…だ、だって…」
怖かったんだもん、と。
半ベソをかきながらそういう拓に、経理は至極不思議そうな顔をしてどこがだ?と聞いてきた。
組み合わせが悪かった。
もう終わってしまったことだから仕方ないのだが…。
「じゃあ、もっかい入るか」
「「へっ?」」
「嫌だ!」
「うぜぇ拓。…アオ、怖くなかったんだろ?じゃー入れるよな?次は俺とだ」
「え、や、いやぁ…も、もういいかな、なんて」
ニヤリ、と悪い顔をする豊に、蒼は冷や汗をかきながらもやんわりと断りを入れる。
だが豊がそれを聞くはずもなく、蒼の腕をとってまた入口の方へ向かいだした。その後ろを、朋也が拓の腕を引いてついてくる。
「ななななんでオレ!?まっ、助けてぇええっ」
「そうだよ待って豊!…ほ、ほんとにもう一回入んの?」
「少しだけな」
「…へ?少し?」
「いいからついてこい」
自分で決めて周りに有無をいわせないその態度は、ほんとに俺様で。けれどそんな豊を好きになってしまったのだから仕方ない。
蒼は困り顔を浮かべながらも、どこか嬉しそうに豊のあとをついていった。
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