48
ニマニマする幸作に、眉間にシワを寄せる豊。少し怪しい方へ会話がいってしまって動揺している蒼はそんな2人の様子に気づかず、1人さっさとモールの中へ入っていくのであった。
そして、平穏な日々が何事もなく過ぎていき。
「うぁー…ヤバい、豊不足だってこれ…」
夏休みに突入した。
ほぼ全校生徒が帰省をし、蒼たちも例外なく実家へと帰ってきている。だから、もう何日も豊と会っていなくて。メールや電話はそれでもしているが、やはり会いたい気持ちは膨らんでいくばかりだ。
直接声が聞きたい。触りたい。触ってほしい。くしゃり、と頭を撫でてほしい。キスだってしたい。抱き締めたい抱き締めてほしい。
そんな欲求は増していくばかり。蒼はこんなに好きだったことを再度確認するハメになり、恥ずかしさで赤くなる顔を枕へ埋めた。
「…はぁぁぁ…」
(電話、してみようかな…)
会いたい、と素直な気持ちを伝えてみようか。そんなことを思いながら携帯を見つめていると、思いが伝わったのか着信音が鳴り響いた。
相手はもちろん豊。
嬉しくなって蒼は慌てながらも、電話に出た。
「も、もしもしっ!?」
『クッ、何焦った声出してんだ。今忙しいのか』
「べ、つに…、…電話、しようかと思ってたとこ」
『…そうかよ。拓みてぇに乙女ってわけじゃねぇんだから、したくなったら遠慮せずしろ、アオ』
「はは、うん、次からはそうする」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!