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メニューを見てオレンジジュースを頼むと、豊がそれを受けて下がっていった。
(…あ、たっくん)
酷く疲れきった顔をした拓もいた。だが少し派手な女性客に捕まっていて、こちらに気づいてはいるが抜け出すことが出来なさそうだ。
蒼は同情の眼差しを送り、静かに両手を合わせた。
「…お待たせしました、お坊ちゃま。オレンジジュースでございます」
「…っ」
「どうかしましたか?…かっこよすぎて、惚れてしまいましたか」
「う、ん、かっこいい…、…あっあの!同じ男としてというかっ、うん、その、…ありが、とう」
「ククッ、焦りすぎだ」
笑う豊だが、それほどまでに執事のフリをした豊はかっこよかったのだ。燕尾服もよく似合っているし、動作も滑らかで自然で。こんな人が自分のお付きの人だったらどんなにいいか、そう思ってしまった。
ああいや、蒼は豊に惚れているのだ。きっと何をしてもかっこよく見えてしまうのだろうが。
「つか、くんのおせぇ。今まで何してたんだ」
「トモ先輩が離してくれなくて…ようやく撒いてこれた」
「チッ、あの野郎…まぁいい。残りはずっと俺とここにいろ」
「っ、で、でもほら、他の人はいいわけ?てか、こんなかっこいいなんて相当人気だったでしょ」
「うぜぇだけだろ。そもそも今のはアオにしかやってねぇ。他は適当だ、適当」
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