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疑う者が多い中、朋也はただ腕を生やしていく。もちろんタネと仕掛けだらけの腕だが、なぜか蒼たちもドキドキとその行く末を見守ってしまった。
やがて手首まで伸びた腕は、あとは手の先を残すだけとなった。朋也はぶん!と腕を一振りし、そして完成した腕をほら、と見せてきた。
「ああ、調子いいですね。こちらの腕はもう古くなってたんですよ」
『は、は、生えた…!』
『だから偽もんだろっ!?』
「触ってみますか?」
その言葉にまだ疑うその人は手を差し出し、握手をして驚愕の表情を浮かべた。感触が、本物だ。いや、こうして握ってくる時点で本物でしかないだろう。
しかし途中までは偽物だったはず。腕を振ったときも、何かやる仕草は特になかった。
『ほ、本物…!?』
「よければこの腕どうぞ。この細胞組織を体内に取り込むとあなたも僕のようになりますよ。…っと、ああすいません、まだ "生きて" ました」
『うわぁぁぁ動いたぁぁぁ!!』
『なんだこいつこえぇえ!!』
「ふふ、いい叫び声ですね。では、失礼」
ペコリ、と頭を下げて戻ってくる朋也は、至極満足げな顔をしていて。
ドッキリというよりトリックショーのようだな、なんて思いつつ、その仕掛けを全く分からないようこなしてしまった朋也が、何よりも恐ろしいなと蒼は思う。
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