出会い
――…春
別れと、…新しい出会いの季節。
山ノ内学園高等部は、昨日入学式を終えたばかりだ。エスカレーター式とあって顔ぶれに変わりはないが、『高校生になった』という事実が新1年生の心を浮つかせる。
その翌日、今日は始業式。
全校生徒が集まり、どの学校でも変わらないダルい式を終え、クラスでHRをして今日は終了だ。そして、1年の教室から寮へ帰る道のりまで、今日だけはたくさんの人が塊になり、新1年生に声をかけていた。
『バスケ部部員・マネージャー大募集っ!』
『そこの背ぇ高い子!ぜひバレー部にっ』
『美術部楽しいよー!』
『ぜひ、ぜひ軽音部に!幽霊部員でも歓迎するから部の存続を…!!』
部活の勧誘だ。
ほぼ全ての部活が新入部員を獲得しようと奮闘している。立て看板を持ち、パフォーマンスをしてみせ、積極的に声をかけて。
…そんな騒がしい中を、少年、青野蒼は出来るだけ運動部に声をかけられないよう、足早に立ち去ろうとしていた。
(運動部なんて入ったら死ぬ…!)
文芸部ならまだいい。しかし運動部はダメなのだ。別にその場で断ればいいのだが、迫りくるような勧誘ばかりで蒼は断りきれる自信がないため、こうして捕まらないようにさっさと寮へ帰ろうとしている。
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